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セルフケア通信

バーンアウト

――介護や看護などの対人サービスにともなうストレスに対して、特に有効な対処法はあるのでしょうか。

 

「理想を言えば、(サービス職では)バーンアウトしない人を採用すればよい」と言う人がいます。もちろん、これは逆説的な言いまわしです。バーンアウトしない人とは、サービスの成行きを客観的に見つめ、何か問題が起こると、仕方のないこととあきらめて、いわゆる「規則」にしたがって問題を処理してしまう人たちです。

彼らは、確かに、顧客との関係に振り回されて、消耗することはないかもしれませんが、相手から信頼され、感謝されるサービスを提供できるかと言えば、サービスの量はともかく、質はあまり期待できないかもしれません。ここに、バーンアウトのディレンマがあります。つまり、良質なサービスの提供に欠かせない「顧客を思いやる心」や「顧客と誠実に関わろうとする姿勢」が、バーンアウトを引きおこす原因となっているのです。

では、良質なサービスを提供し続けている人は、必ずバーンアウトに陥るのでしょうか? 実際に、長いキャリアを通じて、顧客から支持され続けている人も少なくありません。このような人たちに話を聞くと、さまざまなノウハウを語ってくれますが、彼らの言に共通しているのが、「突き放した関心」とでも呼ぶべきスタンスです。「突き放した関心」とは、顧客に共感しながら一定の距離を取る、具体的に言えば、顧客と接する仕事上の役割としての自分と個人としての自分とを明確に区別するという心理的なスタンスを指します。

この2つの自分を区別することで、顧客に良質なサービスを提供するプロフェッショナルとしての姿勢と顧客との関係を「プライベート化」しない姿勢(たとえば、顧客からの叱責や苦情を自分個人の人格に向けられたものととらえるのではなく、仕事上の役割としての自分に向けられたものと割り切って考える姿勢)とを共存させることができます。サービス業従事者として高いレベルの仕事を維持しながら、バーンアウトを回避する、最も効果的な術だと考えられています。

しかし、このつかず離れずの態度は、容易に習得できるものではありません。方法論として知っていることはもちろん大切ですが、現場経験の質と量が決定的に重要となります。逆に言えば、この技能を習得する前に、顧客との「濃密な」関係により、心身ともに消耗しきってしまう恐れもあります。この意味では、まずは、リアリティ・ショックを経験しながらも、自分の能力にみあった理想と現実の妥協点を模索することも時として必要でしょう。

(久保真人/同志社大学政策学部助教授)

【次回】─―バーンアウトに陥ってしまった場合どうすればよいのでしょうか。

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